1日5分、好きなことで豊かさを

私がピアノを習い始めたのは、たぶん4歳くらいのこと。ヤマハ音楽教室に1年間行ってから、近所の個人の先生についていました。(とにかく、そのピアノの先生は怖くてね・・・)父がピアノの調律師だったので、もう物心ついたときには既にピアノをやっていました。父が私が生まれる前に買った、ヤマハ製の木目調のピアノが家にあり、子どものころはピアノの下でよく遊んでいました。ちょっとしたピアノ本体下部にある空間にお手玉が入った箱とかを収納しておりました。

私が習いたいと言ったわけでもなく、気が付けば、月3~4回、怖いピアノの先生のところに行く生活。家での練習も、父に怒られながらで、もう鍵盤を涙で濡らしたことは数知れず。結局高校受験を機に私はピアノをやめて、以降は好きな時に好きなようにたまに弾く程度。大学進学を機に実家を離れてからはほとんど弾くことはなくなりました。

時は流れ、2021年。同じように娘もピアノを習い始め(でも娘のピアノの先生はやさしい!)、彼女にとっては9回目くらいの発表会でした。そして今年は、先生がご自分のピアノ教室を開設されたのを機に、発表会でお母さん連弾どうですか?と打診されたのです。私はこれまで連弾の経験はなかったのですが、もう娘と連弾なんて、最初で最後かもしれない。そう思って引き受けることにしました。

とはいえ、ブランクが長くて、楽譜が読めなくなっていることに愕然。そして指も思うように動かない!仕事して、ご飯作って、夜はコーチングセッションしていたら、ピアノ弾く時間が全然確保できず、寝る前にクラビノーバ(電子ピアノ)でイヤホンつけて1回弾くのでもう精いっぱい。それすらも睡魔に負けて毎日はできませんでした。月に2回ほどの娘のピアノのレッスンの日に、実家の本物のピアノで練習。そんな日々でした。

連弾をすることが決まって、そこからYouTubeでストリートピアノの動画などを見るようになって、ああやっぱりピアノはいいなあと。少し慣れてきてからは、好きな曲を少し弾いてみたりすると、自分の気持ちが本当に落ち着くし、満たされる。それがたった数分だったとしても。この数か月、寝る前の5分程度のピアノ時間のおかげで、私の生活はとても豊かになりました。

30年振りのホールでの演奏は…とても気持ちよかったです。私もちゃんと習いたくなってしまいました。1日5分でいい、仕事とは全然関係ないこと、役に立たなそうなこと、生産性がないこと、コスパが悪いこと…そういう「好きなこと」「ただやりたいことが人生を豊かにするんだと感じました。