この薬を使っている、世界のどこかにいるあなたへ
仕事が好きだ。そんな今の私がとても幸せだと思う。
平日昼間の仕事は、会社員。製薬会社からいろいろな業務を受託するCROと呼ばれる業種で、顧客は製薬会社。この1年、プロジェクトに貢献したCROの社員として、表彰をいただいた。もう本当にうれしかった。この仕事で、私がずっと忘れなかったのはこのデータの向こうには患者がいるということ。仕事に込めてきた思いが、ひとつの形として評価されたことが、本当に嬉しい。
この業界は長くいるけれど、これまで表彰なんてほど遠いものだった。人事考課は良くなかった。最初の頃は、先輩に怒られることもしょっちゅう。トイレで泣いては自席に戻りそれでも必死にもがいて仕事をしていた。ちょうどその時期に私はMicrosoft ACCESSを覚えた。Excelの関数ももっと使えるようになった。仕事に慣れてからも、試練かと思うようなことは必ず定期的に発生する。たった1件のミスからのデータの全チェック。トータル何時間で全部確認できるか、そのための派遣社員の工数計算。手順逸脱報告書、全部で何枚書いただろう。
昇格できない自分、深夜残業&早朝出勤、時には徹夜勤務までしたことあったけれど、そこまでして納期を守ることは評価にもならない。工数超過して利益が出ないのである意味当然なのだけれども。「こんなにがんばっているのに」と被害者意識が芽生えることもあった。仕事では楽しくないことも多いし、むしろそれがほとんどかもしれない。それでも私がこの世界を離れないのは、私の今目の前にあるデータから、世界のどこかの患者さんの姿が見えるからだ。こんな私でも、誰かの力になりたいという心の奥底からの願いが私を支えてくれている。そしてこんな表彰というご褒美があると、もうしばらくはがんばれそうだ。薬の向こう側には、私のような人間もいる。今回受けたこの表彰は、この薬を使っている世界のどこかにいるあなたにも渡したい。