あれから、16年後の桜

桜がきれいだと思えない年が、過去一度だけありました。
娘を妊娠中の2006年。
あっけないほどに簡単に離婚が成立して、
これから私はシングルマザーになると決めた頃。
いや、本当は、決められていなくて覚悟もなくて、自分の境遇にただ絶望していただけ。
妊婦検診に通っていた病院では、むりやり精神科に回されて、
担当の女医さんから
「赤ちゃんはもう臓器はできあがっているし、大丈夫だから、お願いだから抗うつ剤を飲んで」
と言われて、私は「イヤです」の一点張り。
薬剤師だった私は、妊婦がそういう薬を飲むと
どんな影響があるかはだいたい想像はついていました。
しばらく、処方箋は、調剤薬局に持って行かずに捨てていたのです。
まだ、そのときは、良かったと思う。
私は薬は飲まない、と決めることができていたのですから。
でも、何度目かのとき、とうとう調剤薬局に持って行ってしまったのです。
ついこの前までは、私が患者さんに服薬指導する立場だったのに、今は患者だ。
自分がとても落ちぶれたような気がして
自分で自分を嘲笑していたんですよね。
今思うと、自分にひどいことをした、と思います。
数ヶ月後、「お守り代わりに」と処方された精神安定剤に
私はとうとう手を出してしまいました。
突然、発作のように
果てしなく深い穴に突き落とされるような感覚がして
発狂しそうになっていました。
あ、こういうのが「抗不安薬」の「不安」なんだと実感していました。
薬を飲めば、発狂するのは避けられました。
美しいはずの桜、まぶしい春の光が、ただただ痛くて、なんて自然は残酷なのだと思っていました。
2006年春、それまでの人生で最悪の春でした。
そしてやっと季節は梅雨になり、娘が生まれました。

あれから16年めの春が来た

娘は高校生になります。
今振り返ると、最悪だったあの春は
今の私の土台にもなる、特別な春だと思えます。
夫と、学校のの近くにある神社に初めて行ってみました。
娘の学校生活がどうか守られますように。

 

ブログ

前の記事

変わらない年齢差