精神安定剤の意味
妊娠中に離婚をした私は、離婚成立後気分一新、シングルマザーとして生きるぞ!といきなり気持ちを切り替えられもせず、切り替えに1年以上かかった。離婚はあまりにも想定外の出来事で、自分で決めたはずのことなのに、徐々に私の精神状態がおかしくなってきた。時折奈落の底に突き落とされるな感覚がして発狂寸前になることがあった。
私は産婦人科の妊婦検診と精神科の受診がセットにされていた。薬剤師としてバリバリ働いていた時の姿は見る影もなく、無職、パートナーなしの妊婦の精神科通いなんて、マジ最悪だと思っていた。自分で自分を嘲笑するってこういうことなんだと知った。どうしても抗うつ薬を飲んでくれないのなら、と「お守り代わりに」と処方された精神安定剤。薬なんか飲むもんかと思っていたが、発狂しそうになる発作に耐え切れずにとうとう手を出してしまう。そうすると、確かに発狂することはなくなった。ああ、これが「安定」ということなんだ。妙に「安定剤」の意味にひとり納得していた。
精神が「安定」していることは、本当に大事だと思うし、日常生活には必須だと思う。いちいち発狂などしていたら、とてもじゃないが日常生活は送れない。コーチになった今、私は自らにもコーチをつけているが、それは、コーチとして当然のことであるという他に理由があるとしたら、それは自分の精神の「安定」のためでもある。
お腹の子どもに、発狂する私の声を聴かせるくらいなら、安定剤飲んで何も聴かせないほうがマシだよねと言い訳しながら、でも、飲んだ薬が完全に体から抜けるまでの時間を考えて、出産2週間くらい前に、私は薬を一切やめた。妊婦が薬を飲むなんて、しかも私は薬剤師のくせに。お腹の子どもに謝るしかなかった。